昔はおじいさんが家を建てたらそのとき木を植えましたな。
この家は二百年は持つやろ、いま木を植えておいたら二百年後に家を建てるときに、
ちょうどいいやろといいましてな。
二百年、三百年という時間の感覚がありましたのや。
今の人にそんな時間の感覚がありますかいな。
もう目先のことばかり、少しでも早く、でっしゃろ。
それでいて、「森を大事に、自然を大切に」ですものな。
木は本来きちんと使い、きちんと植えさえすれば、ずっと使える資源なんでっせ。
鉄や石油のように掘って使ってしまつたらなくなるというもんやないんでっせ。
植えた木が育つまで待たせる、使い捨てにしないという考えが、ほんのこないだまで
ありました。
本来持っている木の性質を生かして、無駄なく使ってやる。
これは当たり前のことです。
この当たり前のことをしなくなったですな。
西岡常一