弘前市は青森市と違って、空襲による戦災を受けていないために、
木造の古い民家や商家、武家屋敷などが残っている.
固く凍った弘前城のお堀の向かいに、教えられた「石場酒店」はあった.
店の棚にはたくさんの青森の酒がならんでいて、手頃な値段のやつを選んで、
福岡に送ってもらうことにした.
石場酒店は江戸の昔から、弘前城を相手に雑貨の商いをしてきた.
店の奥は広い土間で、土のかまどや、蔵の入口の厚い戸がある.
冬の間の作業場でもあるのだろう.
土間に続いて、黒光りのする板間には囲炉裏が切ってある.
太い真っ黒の柱には太くて白い蝋燭がつけられていた.
重要文化財に指定されて、住みやすいように改修できずに困っていた.
「あとひと月もすれば桜が咲くよ」
女将さんの言葉を聞いた翌々日の東京江戸川公園は満開の桜だった.